地震、台風、豪雨など、あらゆる災害で発生しうるのが停電です。2019年の台風15号では千葉県を中心に最大約93万戸が停電し、完全復旧まで約2週間を要しました。電気に依存した現代の生活において、停電は日常のあらゆる場面に影響を及ぼします。
照明が使えない、冷蔵庫が止まる、エアコンが動かない、スマートフォンが充電できない。これらの問題は事前に対策を講じておけば、被害を最小限に抑えることが可能です。逆に言えば、何も備えていない状態で長期停電に見舞われると、生活の質が一気に低下します。
この記事では、停電発生時に慌てないための準備と対処法を、電源確保・食料保存・温度対策の3つの軸で解説します。

電源確保の3つの方法
モバイルバッテリー
最も手軽な電源確保手段がモバイルバッテリーです。スマートフォンは災害時の情報収集・連絡手段として命綱になるため、充電手段の確保は最優先事項です。容量10,000mAh以上のモバイルバッテリーを2個以上用意しておくと、スマートフォンを4〜5回分充電できます。
普段から充電を切らさないよう、月に1回は残量をチェックして満充電にしておく習慣をつけましょう。リチウムイオン電池は長期間放置すると自然放電で残量がゼロになるため、定期的なメンテナンスが必要です。
ポータブル電源
モバイルバッテリーよりも大容量の電源が必要な場合は、ポータブル電源が選択肢に入ります。容量300Wh以上のモデルなら、スマートフォンの充電に加えてLED照明や小型扇風機なども稼働させることができます。500Wh以上のモデルであれば、電気毛布やミニ冷蔵庫も一定時間動かせるため、停電時の快適性が格段に上がります。
価格帯は容量によって3万〜15万円程度。日常的にキャンプやアウトドアで使う方なら、防災用と兼用できるため投資効率が高い選択です。ソーラーパネルとセットで購入しておけば、長期停電時にも太陽光で充電が可能になります。
カセットガス式発電機
ガソリン式と比べてカセットボンベで手軽に動かせるのがカセットガス式発電機です。屋外での使用が前提となりますが、一酸化炭素中毒の危険があるため、室内や車庫内では絶対に使用しないでください。毎年、災害時に室内で発電機を使用して一酸化炭素中毒になる事故が報告されています。総務省消防庁も室内での発電機使用による一酸化炭素中毒事故に注意喚起を行っています。
冷蔵庫の食料を守るコツ
停電すると冷蔵庫が止まり、中の食品が傷み始めます。しかし、冷蔵庫は扉を開けなければ2〜4時間程度は冷気を維持できます。冷凍庫に至っては、食品がぎっしり詰まっている状態なら24時間程度は温度を保てることもあります。この時間を少しでも延ばすためのポイントを押さえておきましょう。
扉の開閉を最小限にする
停電したら冷蔵庫の扉は極力開けないのが鉄則です。中身を確認するために何度も開け閉めすると、冷気がどんどん逃げてしまいます。事前に冷蔵庫の中身リストを作って扉に貼っておくと、開けなくても中身を把握できます。何を取り出すか決めてからサッと開閉するのがコツです。
保冷剤と氷を常備する
冷凍庫に保冷剤や水を入れたペットボトルを常に凍らせておくと、停電時にこれらが保冷材の役割を果たし、冷蔵庫内の温度上昇を遅らせることができます。冷凍庫がいっぱいであるほど、互いの冷気で温度を維持しやすくなります。冷凍庫に空きスペースがある場合は、水を入れたペットボトルで埋めておくと一石二鳥です。
食材の消費優先順位
停電が長引く場合は、傷みやすい食材から優先的に消費しましょう。生肉・生魚→乳製品→卵→野菜の順で傷みやすさが異なります。調理にはカセットコンロを使い、火を通して安全に食べることが重要です。食中毒を防ぐため、少しでも異臭やぬめりがある食材は廃棄する判断も必要です。
夏の停電:暑さ対策
夏場の停電はエアコンが使えなくなるため、熱中症のリスクが急激に高まります。特に高齢者や乳幼児は体温調節機能が弱いため重症化しやすく、暑さ対策は命に関わる問題です。2018年の北海道胆振東部地震では9月の発災でしたが、停電により暑さで体調を崩す方が多数出ました。
電池式やUSB充電式の携帯扇風機、冷感タオル、うちわなどを備蓄品に加えておきましょう。体を冷やすには、濡らしたタオルを首や脇の下に当てるのが効果的です。水分補給もこまめに行い、経口補水液を備蓄しておくと安心です。
日中は家の中で最も涼しい部屋(北向きの部屋や1階)に移動し、窓を開けて風通しを確保します。ただし、外気温が室温より高い場合は窓を閉めてカーテンで日差しを遮るほうが室温の上昇を抑えられます。状況に応じた判断が大切です。
冬の停電:寒さ対策
冬場の停電では暖房が使えなくなり、低体温症の危険があります。厚生労働省は低体温症による健康被害について注意喚起を行っており、特に高齢者が室内でも低体温症になるケースがあることを指摘しています。
石油ストーブ(電気を使わないタイプ)を1台用意しておくと、停電時の暖房手段として非常に心強い存在になります。灯油の備蓄もセットで行いましょう。ただし、換気を怠ると一酸化炭素中毒の恐れがあるため、1時間に1〜2回は窓を開けて換気してください。
電気に頼らない防寒グッズとして、使い捨てカイロ、湯たんぽ、寝袋、アルミ製の保温シートなども効果的です。家族で一つの部屋に集まって過ごすと、体温で室温の低下を多少は緩和できます。気象庁の天気予報で寒波の情報を事前にキャッチし、停電に備えて早めに暖房器具と灯油を確認しておくことも大切です。

オール電化住宅の追加対策
オール電化住宅は停電の影響を最も受けやすい住環境です。調理・給湯・暖房のすべてが電気に依存しているため、停電イコール生活機能の全停止を意味します。ガス併用の住宅であればコンロや給湯器が使えますが、オール電化ではそれすらできません。
カセットコンロは必須の備蓄品です。予備のカセットボンベも10本以上ストックしておくと、1週間程度の停電にも対応できます。また、ポータブル電源の導入も強くおすすめします。IHクッキングヒーターは使えなくても、電気ケトルや電子レンジの代わりにカセットコンロで対応する発想の転換が大切です。
まとめ
停電対策の基本は、電源確保(モバイルバッテリー・ポータブル電源)、食料保存(冷蔵庫の扉を開けない・保冷剤の活用)、温度対策(夏は冷感グッズ・冬は石油ストーブ)の3本柱です。
電気がなくても最低限の生活を維持できるよう、アナログな代替手段を常に用意しておくことが、停電に強い家庭をつくる第一歩です。特にオール電化住宅にお住まいの方は、電気が止まった時の影響範囲が大きいため、より入念な準備を心がけてください。

※2026年4月時点の情報です。
