日本は世界でも有数の地震大国です。気象庁の統計によると、震度1以上の地震は年間2,000回以上観測されており、いつどこで大きな地震が発生してもおかしくありません。
「いつか準備しよう」と思いつつ、何も手をつけていない方も多いのではないでしょうか。しかし、地震対策は大きく分けると「家具固定」「避難経路の確保」「備蓄」の3つの柱に集約されます。どれか1つでも欠けていると、いざという時に命に関わるリスクが高まります。
この記事では、それぞれの柱について具体的な対策方法を解説します。全部いっぺんにやる必要はありません。できることから少しずつ始めていきましょう。
【第1の柱】家具固定で「室内の安全」を確保する
地震の死因で多いのは家具の転倒
阪神・淡路大震災では、負傷者の約半数が家具の転倒や落下物によるものでした。地震対策の第一歩は、倒れてくる家具を固定することです。特に寝室やリビングなど長時間過ごす部屋の家具は最優先で対策してください。就寝中は無防備な状態ですから、枕元に大きな家具がある場合は位置を変えるだけでもリスクを大幅に減らせます。
家具固定の具体的な方法
L字金具で壁にネジ止めするのがもっとも確実な固定方法です。壁の下地(柱や間柱)にしっかりネジが入っていることが重要なので、下地探しツールを使って確認してから施工しましょう。賃貸で壁に穴を開けられない場合は、突っ張り棒タイプの転倒防止器具を使いましょう。突っ張り棒は天井との間にすき間なく設置し、家具の奥側に取り付けるのがポイントです。
テレビは転倒防止ジェルマットで台に固定し、冷蔵庫はベルト式の固定器具を使います。食器棚には耐震ラッチを取り付け、揺れた際に扉が開かないようにしておきましょう。ガラス扉の食器棚には飛散防止フィルムを貼っておくと、割れたガラスによるケガを防げます。
見落としがちな対策ポイント
吊り下げ式の照明器具も揺れで落下する危険があります。チェーンやワイヤーで補強するか、シーリングライトに交換すると安全です。また、高い場所に重いものを置かないという基本も改めて確認してください。本棚の上段に重い辞書を並べている家庭は意外と多いものです。
ピアノや大型の水槽なども転倒すると非常に危険です。ピアノには専用の転倒防止器具がありますし、水槽は低い位置に設置して滑り止めマットを敷いておくことで被害を軽減できます。

【第2の柱】避難経路を確認して「逃げ道」を確保する
ハザードマップで自宅の危険度を把握する
まず国土交通省ハザードマップポータルサイトで、自宅周辺の地震リスクを確認しましょう。揺れやすさマップ、液状化マップなど、さまざまな情報が閲覧できます。自宅がどのような危険にさらされるかを把握することが、適切な避難計画の第一歩です。液状化が想定される地域では、地盤沈下によって建物が傾く可能性もあるため、より慎重な避難計画が求められます。
避難場所と避難経路を家族で共有する
自治体が指定する「指定緊急避難場所」と「指定避難所」は役割が異なります。緊急避難場所は一時的に身を守る場所(公園・広場など)、避難所は一定期間生活できる場所(学校・公民館など)です。両方の場所と、そこまでの経路を家族全員で確認しておきましょう。
避難経路は2ルート以上把握しておくのが望ましいです。地震で道路が寸断される可能性があるため、1つのルートに頼るのは危険です。実際に歩いてみて、ブロック塀や古い建物など倒壊リスクのある場所をチェックしておくとさらに安心です。
家族の連絡手段を決めておく
災害時は電話がつながりにくくなります。NTTの災害用伝言ダイヤル「171」や、災害用伝言板(web171)の使い方を家族で練習しておきましょう。毎月1日と15日に体験利用が可能です。
また、集合場所を「自宅→近所の公園→学校」のように優先順位をつけて決めておくと、連絡が取れなくても合流しやすくなります。家族それぞれの日中の行動パターン(職場、学校、習い事の場所など)を共有しておくことも、安否確認の手がかりになります。

【第3の柱】備蓄で「生き延びる力」を蓄える
最低3日分、理想は7日分
水は1人1日3リットル、食料は1人1日3食を最低3日分備蓄するのが基本です。内閣府は南海トラフ地震などの大規模災害を想定し、可能であれば7日分の備蓄を推奨しています。
4人家族の場合、水だけで3日分36リットル(2リットルペットボトル18本)が必要です。一度に全量を揃えるのが難しければ、毎週の買い物で少しずつ増やしていく方法でも構いません。飲料水とは別に、トイレや洗い物に使う生活用水も確保しておくと心強いです。
ローリングストック法で無理なく備蓄する
備蓄食を買い込んで放置すると、気づいたら期限切れということになりがちです。ローリングストック法は、日常的に食べるものを多めに買い、使った分だけ補充する方法です。レトルトカレー、缶詰、カップ麺など、普段から食べるものをストックしておけば、賞味期限切れを防ぎながら備蓄量を維持できます。特別な備蓄食を買う必要がないため、費用面でも無理がありません。
忘れがちな備蓄品リスト
食料や水だけでなく、以下のものも備蓄しておきましょう。
常備薬・持病の薬(最低1週間分)は、災害直後に入手するのが非常に困難です。お薬手帳のコピーも一緒に保管しておくと、避難先で処方を受ける際に役立ちます。
その他にも、モバイルバッテリー、懐中電灯(予備電池)、簡易トイレ、ラップ、ウェットティッシュ、現金(小銭含む)、身分証明書のコピーなどが必要になります。メガネや入れ歯など、ないと日常生活に支障が出るものの予備も忘れずに準備しておきましょう。

マンション住まいの地震対策
マンションは戸建てに比べて上階ほど揺れが大きくなる傾向があります。高層階にお住まいの方は、家具固定をより入念に行いましょう。タワーマンションの場合は長周期地震動にも注意が必要で、大きくゆっくりとした揺れが数分間続くことがあります。
エレベーターは地震時に停止する可能性が高いため、階段での避難を前提にした準備が必要です。重い備蓄品を大量に持ち出すのは困難ですので、1次持ち出し用の軽量リュックを別途用意しておくと安心です。重い荷物は玄関近くや階段室に近い場所に保管しておくと、いざという時に持ち出しやすくなります。
また、マンションの管理組合で防災計画が策定されているか確認しましょう。共用部に備蓄倉庫がある場合は、その中身と使い方を把握しておくことも大切です。管理組合の防災訓練にはできるだけ参加して、住民同士の顔が見える関係を築いておくことも重要な防災対策です。
地震が起きた瞬間にやるべきこと
まずは身を守る行動をとる
「ドロップ(姿勢を低く)・カバー(頭を守る)・ホールドオン(揺れがおさまるまで動かない)」が地震発生時の基本行動です。テーブルの下に潜り込み、脚をしっかり掴んでください。テーブルがなければ、クッションや座布団で頭を守りましょう。キッチンにいる場合は、火を止めようとするより先に身を守ることが優先です。揺れが収まってから火の始末をしても遅くはありません。
揺れがおさまったら
まず火の元を確認し、ガスの元栓を閉めます。次にドアや窓を開けて避難経路を確保してください。大きな地震では建物がゆがんでドアが開かなくなる場合があるため、揺れがおさまったらすぐにドアを開ける習慣を覚えておきましょう。
その後、テレビやラジオ、スマートフォンで正確な情報を収集し、避難が必要かどうかを判断します。SNSのデマに惑わされず、気象庁や自治体など公的機関の発信する情報を優先してください。余震が続く場合は、損傷した建物の中にとどまらず、安全な場所へ移動することを検討しましょう。

まとめ
地震対策は「家具固定」「避難経路の確保」「備蓄」の3つの柱で構成されます。すべてを一度に完璧にする必要はありません。まずは寝室の大きな家具を1つ固定する、避難場所を1つ確認する、水を1ケース購入する、といった小さなアクションから始めてみてください。
家族で防災について話し合う時間を定期的に設けることも重要です。年に1回は避難経路の確認と備蓄品の見直しを行い、常に「いざという時に動ける状態」を維持しておきましょう。地震大国に暮らす以上、備えは日常の一部として取り入れていくのが最も確実な対策です。
※2026年4月時点の情報です。

