防災の備えは季節を問わず大切ですが、夏場は他の季節にはない独自のリスクが存在します。気温が35度を超える猛暑日に大規模な停電が発生したら、どうなるでしょうか。エアコンは動かず、冷蔵庫の中身は傷み始め、体力は一気に奪われていきます。近年は猛暑日の日数が年々増加しており、夏場の災害リスクは以前より格段に高まっています。
実際に2018年の北海道胆振東部地震は9月に発生しましたが、残暑が厳しい時期で、避難所での熱中症対策が大きな課題となりました。2019年の台風15号では千葉県で大規模停電が2週間以上続き、夏の暑さの中でエアコンが使えない生活を強いられた住民が多数いました。夏の災害は、冬とは全く異なる準備が求められます。
この記事では、夏の防災対策として特に重要な「暑さ対策」と「食品管理」の2つに焦点を当て、具体的な備えの方法を解説していきます。夏こそ防災備蓄の見直しが必要な季節です。

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夏の災害で最も怖いのは「熱中症」
夏場に災害が起きた場合、建物の倒壊や浸水と並んで深刻な問題となるのが停電によるエアコン停止から引き起こされる熱中症です。環境省の熱中症予防情報サイトによると、室内での熱中症は全体の約4割を占めています。災害時は水分補給すら十分にできない状況が重なるため、リスクは通常時の比ではありません。
熱中症は重症化すると意識障害や臓器不全を引き起こし、命に関わる危険な状態です。特に高齢者や乳幼児がいる家庭では、暑さ対策は命に関わる問題です。高齢者は喉の渇きを感じにくくなるため、意識的に水分を摂る仕組みが必要になります。以下のグッズを防災バッグに入れておくことを強くおすすめします。
備えておきたい暑さ対策グッズ
冷却タオル(水に濡らして振ると冷たくなるタイプ)は夏の防災グッズの必須アイテムです。電気不要で繰り返し使えるため、停電時に真価を発揮します。首に巻くだけで体感温度が3〜5度下がると言われており、1人1枚は用意しておきましょう。価格も500〜1,000円程度と手頃です。
ハンディファン(電池式)も有効ですが、気温が35度を超えると熱風を浴びるだけになるため、必ず冷却タオルと併用してください。瞬間冷却パック(叩くと冷たくなるタイプ)は使い切りですが、高熱が出た場合や熱中症の応急処置に使えるため、3〜5個は備蓄しておきたいところです。脇の下や太ももの付け根など、太い血管が通る部分に当てると効率的に体温を下げられます。
停電時の室内温度を下げる工夫
エアコンが使えない状況で室温を下げるには、いくつかの方法を組み合わせることが重要です。一つの方法だけでは効果が限定的でも、複数の対策を重ねることで体感温度をかなり下げることができます。
まず、窓を2箇所以上開けて風の通り道を作るのが基本中の基本です。対角線上の窓を開けると最も効率的に換気ができます。窓が1箇所しかない部屋では、ドアを開けて廊下との空気の流れを確保しましょう。風が入る側の窓を小さく開け、出る側の窓を大きく開けると、風速が上がって涼しさが増します。
遮光カーテンや遮熱シートも効果的です。直射日光を遮るだけで室温上昇を2〜3度抑えられます。アルミの遮熱シートは窓に貼るだけで使えるため、事前に準備しておくとよいでしょう。すだれやよしずを窓の外側に設置するのも、古くから使われている有効な暑さ対策です。停電時の電源確保や食料保存のコツは以下の記事でさらに詳しく解説しています。

打ち水も有効な手段の一つです。ベランダや玄関前に水を撒くと、気化熱で周囲の温度が下がります。ただし、災害時は水が貴重なため、お風呂の残り湯がある場合に限られます。打ち水は朝夕の涼しい時間帯に行うと効果が持続しやすくなります。
夏場の備蓄食品で気をつけるべきこと
夏場の備蓄食品管理は、冬場よりもはるかに神経を使います。備蓄食品の保管場所は室温30度以下が推奨されていますが、夏場の室内は40度を超えることもあるため、保管場所の選定が重要になります。高温にさらされ続けると、賞味期限内でも品質が劣化する可能性があります。
保管場所の選び方
直射日光が当たらない北向きの部屋やクローゼットの中が最適です。床に直置きせず、すのこの上に置くと通気性が確保でき、湿気によるカビも防げます。車のトランクに防災グッズを積んでいる方は要注意です。夏場の車内温度は60度を超えるため、食品の備蓄には適しません。車に積む防災グッズは食品以外に限定し、食品は必ず室内で保管してください。
停電時の冷蔵庫の扱い方
東京都福祉保健局の情報によると、停電しても冷蔵庫の扉を開けなければ2〜3時間は庫内温度を保てます。頻繁に開け閉めすると一気に温度が上がるため、停電したらまず「冷蔵庫を開けない」を家族全員に周知することが大切です。必要な食材を取り出す場合は、一度にまとめて出すようにしましょう。
保冷剤を冷凍庫に多めにストックしておくと、停電時にクーラーボックスに移して簡易冷蔵庫として使えます。ペットボトルの水を凍らせておくのも同じ効果が期待できるうえ、溶けたらそのまま飲料水になるため、一石二鳥の方法です。夏場は冷凍庫のスペースの3分の1程度を保冷剤やペットボトル氷で埋めておくと安心です。
夏場の水分備蓄は多めに確保する
一般的に防災用の水の備蓄量は「1人1日3リットル×3日分」と言われていますが、夏場はこれでは足りません。発汗量が増えるため、夏場は1人1日4〜5リットルを目安に備蓄しておく必要があります。4人家族であれば3日分で48〜60リットル。2リットルのペットボトルで24〜30本が目安です。置き場所の確保も含めて、計画的に準備しましょう。
経口補水液(OS-1など)も2〜3本は用意しておきましょう。大塚製薬のOS-1は常温保存で約1年持つため、備蓄にも向いています。汗をかいた状態で水だけを大量に飲むと、体内のナトリウム濃度が下がり「水中毒」を引き起こす危険性があるため、塩分補給も意識してください。塩飴やスポーツドリンクの粉末も備蓄リストに入れておくと安心です。粉末タイプは軽量でかさばらないため、備蓄に向いています。水の備蓄量の目安や保存方法については以下の記事で詳しくまとめています。





夏の防災で見落としがちな衛生管理
夏場の災害で意外と見落とされるのが衛生面の問題です。断水時にはトイレや手洗いが困難になりますが、夏は汗や皮脂で身体が汚れやすく、雑菌が繁殖しやすい環境が整ってしまいます。衛生状態の悪化は、感染症のリスクを一気に高めます。
ウェットティッシュ(大判タイプ)は身体を拭くのに使えるため、通常の備蓄量より多めに用意しておくのがおすすめです。制汗シートやドライシャンプーもあると、避難生活のストレスが大幅に軽減されます。虫除けスプレーも忘れずに準備しましょう。夏場の避難所では蚊やハエが大量に発生し、感染症のリスクが高まります。蚊取り線香やワンプッシュ式の防虫剤も備蓄に加えておくと安心です。食中毒の予防として、手指消毒用のアルコールジェルも必ず備蓄リストに入れてください。食品の備蓄をムダなく回すローリングストック法のやり方は以下の記事で解説しています。



まとめ:夏の防災は「暑さ」を最大の敵と認識する
夏の防災対策で最も重要なのは、暑さが人の命を直接脅かすという認識を持つことです。冷却タオルや瞬間冷却パックなどの暑さ対策グッズを備え、備蓄食品の保管場所を見直し、水分は通常の1.5倍を確保する。停電時の冷蔵庫の扱い方を家族で共有し、衛生用品も多めに準備しておく。これらの対策をひとつずつ実践することで、夏の災害に対する備えは格段に強化されます。


※2026年4月時点の情報です。

