地震や台風のあとに水道が止まると、自治体の給水車が出動します。でもここで問題になるのが「水をどうやって持ち帰るか」です。ペットボトルや鍋では運べる量がたかが知れていますし、こぼれたり運びにくかったりして、給水所に何度も往復するハメになります。
断水は地震だけでなく、水道管の老朽化による破裂でも起こります。2024年1月の能登半島地震では断水が3ヶ月以上続いた地域もありました。2022年の静岡県での台風被害でも大規模な断水が発生し、復旧までに1週間以上かかった地区があります。水の確保は災害対策のなかでも最優先で考えるべきテーマです。
この記事では、防災用の給水タンクの選び方を「容量」「素材」「機能」の3つの軸で解説し、家族構成に合わせた適切なサイズの目安もお伝えします。
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給水タンクが必要な理由
断水時は給水所まで水を取りに行く
災害で断水が発生すると、自治体が設置した給水拠点まで自分で水を取りに行く必要があります。給水所は自宅から数百メートル〜数キロ離れていることも珍しくなく、重い水を運ぶ手段がないと何往復もすることになります。東日本大震災では給水所に数時間並んだケースもあり、効率よく水を運べるタンクの重要性が改めて認識されました。
内閣府の防災情報ページでも、家庭での水の備蓄と給水用タンクの準備が推奨されています。ペットボトルでの備蓄に加えて、給水所から効率よく水を運ぶための給水タンクは、両方揃えておくのが理想です。
1人あたり1日3リットルが目安
飲料水と調理用を合わせると、1人あたり1日約3リットルの水が最低限必要とされています。4人家族なら1日12リットル、3日分で36リットルです。トイレの水や手洗い、歯磨きなど生活用水を含めると、1人あたり1日7〜10リットルが理想的な量になります。この量を効率よく運ぶには、やはり専用のタンクが欠かせません。
ペットボトルの備蓄だけでは不十分な理由
ペットボトルで水を備蓄している方は多いですが、備蓄水はいずれなくなります。断水が1週間を超えるケースでは、給水所から何度も水を運ぶ必要があり、そのための容器がなければ対応できません。2リットルのペットボトルを何本も抱えて歩くのは現実的ではなく、10リットル以上をまとめて運べる給水タンクの存在価値はここにあります。

給水タンクの種類と特徴
ハードタイプ:安定感があり自立する
ポリエチレンやポリカーボネートなどの硬い素材で作られた箱型タンクです。空の状態でもしっかり自立するため、コックを取り付ければ蛇口のように使えます。水を入れた状態で棚に置いてウォーターサーバー的に使うこともできて、日常使いとの兼用がしやすいのもメリットです。
デメリットは、使わないときもかさばること。10リットル以上のハードタンクは収納スペースを取るため、マンション住まいの方は置き場所をあらかじめ確保しておく必要があります。価格帯は10リットルで1,000〜2,000円程度、20リットルで2,000〜3,000円程度が相場です。
ソフトタイプ:折りたたんでコンパクトに収納
ソフトタイプの最大の利点は、使わないときに折りたたんで防災リュックに入れられることです。ビニール素材やナイロン素材で作られており、広げると自立するものもあります。重さは100〜300g程度と軽く、持ち出し袋に入れておけるサイズ感が魅力です。
ただし、ハードタイプに比べると耐久性は劣ります。角がある場所に当たると穴が開くリスクがあるため、運搬時は注意が必要です。また、使用後に乾かしにくいという声もあるので、カビ対策として使用後はしっかり水気を切って乾燥させましょう。500〜1,500円程度で購入でき、コスパに優れています。
ウォーターバッグタイプ:給水所で受け取りやすい
ウォーターバッグは、給水所での受け取りに特化した製品です。口が大きく開くため、給水車のホースから直接水を入れやすい設計になっています。自治体が配布する給水袋もこのタイプが多く、サンデーマウンテンのサイトでも各種ウォーターバッグの比較が紹介されています。背負えるリュック型のウォーターバッグは、両手が空くため子供連れの方にもおすすめです。
キャスター付きタンク:重い水もラクに運搬
キャスター付きの給水タンクは、20リットル以上の重い水でも楽に運搬できます。キャリーカートにタンクを載せるタイプと、タンク自体にキャスターが付いているタイプがあります。給水所から自宅までの距離が長い方や、力に自信がない方には特におすすめの選択肢です。ただし、段差や砂利道では使いにくいため、自宅周辺の道路状況も考慮して選びましょう。

容量の選び方:家族構成別の目安
一人暮らし:5〜10リットル
一人暮らしの場合は、5〜10リットルのタンクが1つあれば十分です。水を入れると5リットルで約5kg、10リットルで約10kgになるため、一人で持ち運ぶことを考えると10リットルが上限の目安です。給水所までの距離が長い場合は、5リットルを2つに分けたほうが運びやすいです。片手に1つずつ持てばバランスも取りやすくなります。
2〜3人家族:10〜15リットル
2〜3人家族なら10〜15リットルのタンクが使いやすいサイズです。キャスター付きのカートがあれば15リットルでも楽に運搬できます。コック付きのハードタイプなら、自宅でそのまま給水ステーションとして使えるのも便利です。2人で交代しながら運べる重さなので、実用性と容量のバランスが最も良いサイズ帯と言えます。
4人以上の家族:10リットル×2個がおすすめ
4人以上の家族では、20リットルの大型タンク1個より、10リットルのタンクを2個用意するほうが実用的です。水を入れた20リットルのタンクは約20kgになり、成人男性でも持ち運びがかなり大変です。10リットルなら大人2人で1個ずつ運べるため、効率も良くなります。万が一1個のタンクに穴が開いたり壊れたりしても、もう1個が使えるというリスク分散の面でもメリットがあります。
選ぶときにチェックしたい機能
コック(蛇口)付きかどうか
コック付きのタンクは、傾けなくても水を注げるため非常に便利です。手を洗う、コップに水を入れる、調理に使うといった日常動作が格段に楽になります。ハードタイプのタンクはコック付きが多く、ソフトタイプでもコック対応の製品があります。コックの開閉がスムーズかどうかも確認しておきたいポイントです。安価な製品ではコックが固くて操作しにくいものもあります。
持ち手・取っ手の形状
水を入れた状態で10kg前後になるタンクを運ぶわけですから、持ち手の握りやすさは重要です。太めのグリップや、肩掛けベルト付きの製品を選ぶと、長距離の運搬でも手が痛くなりにくいです。リュック型の給水バッグは両手が空くため、子供を連れた避難時にも適しています。実際に水を入れた状態で持ってみて、グリップの太さや位置が手にフィットするか確認するのがベストです。
BPA(ビスフェノールA)フリー素材
飲料水を入れるタンクは「BPAフリー」や「食品衛生法適合」の表示がある製品を選ぶのが安心です。安価な製品のなかには食品用に適さない素材を使っているものもあるため、購入時にはパッケージや商品説明をよく確認しましょう。エア防災のサイトでも、素材選びのポイントが詳しく解説されています。
目盛り付きは残量確認に便利
透明または半透明の素材で、外側に目盛りが付いているタンクは、中の水の残量が一目で分かります。災害時は残りの水を計画的に使う必要があるため、目盛り付きモデルは地味ながら非常に役立つ機能です。
給水タンクの保管と手入れ
直射日光を避けて常温保管
プラスチック素材は紫外線で劣化するため、直射日光が当たらない涼しい場所で保管してください。押し入れ、クローゼット、玄関の靴箱の上などが適しています。ソフトタイプは折りたたんで防災リュックに入れておけば、場所を取りません。車のトランクに入れておく場合は、夏場の高温で素材が劣化する可能性があるため、断熱バッグに入れるなどの工夫をしましょう。
年に1回は水を入れてテスト
いざというときに「コックが壊れていた」「蓋が閉まらない」では困ります。年に1〜2回は実際に水を入れて、コックの動作確認と漏れチェックを行いましょう。防災の日(9月1日)のタイミングで確認するのがおすすめです。テスト後の水は洗濯や掃除に使えば無駄になりません。
使用後は必ず乾燥させる
タンクを使った後は、水気を完全に切ってから保管してください。水が残ったまま密閉するとカビや雑菌が繁殖し、次に使うときに衛生面で問題が出ます。特にソフトタイプは内部が乾きにくいため、裏返して風通しの良い場所で数日間乾燥させるのが理想です。

まとめ:断水時に「水を運ぶ手段」を確保しておこう
給水タンクは、断水という最も身近な災害リスクに対する備えです。一人暮らしなら5〜10リットルのソフトタイプ、家族がいるなら10リットルのコック付きハードタイプを2個。この基本を押さえておけば、断水時でも慌てず行動できます。価格も500〜3,000円程度と手頃で、備蓄水と合わせて準備しておけば、水に関する災害対策はほぼ万全です。備蓄水だけでなく「水を運ぶ手段」まで準備しておくことが、本当の水対策です。

