通勤中、買い物中、旅行中──車に乗っている時に災害が起きたらどうしますか?自宅に置いてある防災リュックは使えません。車の中に防災グッズを常備しておけば、外出先で被災しても最低限の備えがある状態で行動できます。
また、近年は避難所の密集を避けるために車中泊避難を選ぶ方が増えています。熊本地震では車中泊避難者が推定10万人を超えたとも言われており、車を「動く避難所」として活用するためにも、車載防災グッズの準備は欠かせません。
この記事では、車に常備しておくべき防災グッズ、車中泊避難の注意点、季節別の温度対策まで詳しく解説します。ドライブの前に一度、トランクの中身を見直してみませんか。
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なぜ車にも防災グッズが必要なのか
外出先での被災に備える
日本人の平均的な通勤時間は片道約40分。仕事や買い物も含めると、1日のうち数時間は自宅から離れている計算になります。自宅に完璧な防災セットがあっても、自宅にいなければ意味がないのです。車に最低限の防災グッズを積んでおけば、どこにいても備えがある状態を維持できます。
車中泊避難という選択肢
避難所は混雑、プライバシーの確保が難しい、ペットが連れていけないなど、さまざまな理由で車中泊避難を選ぶ方がいます。車内は雨風をしのげ、エアコンが使え(燃料がある間は)、プライベート空間が確保できるというメリットがあります。
ただし、車中泊にはエコノミークラス症候群や一酸化炭素中毒など命に関わるリスクもあるため、正しい知識と準備が必要です。後半で詳しく解説します。

車載用防災グッズ基本セット
水・食料
車内に積んでおく水は、高温対応の長期保存水を選びましょう。通常のミネラルウォーターは車内の高温で品質が劣化する可能性がありますが、保存水は車内保管を想定して作られているため安心です。保存期間5~10年の商品が多く、頻繁に入れ替える手間もかかりません。
食料も高温に耐えられるものを選ぶ必要があります。羊羹(ようかん)は高温でも品質が変わりにくく、カロリーも高いため非常食に最適です。井村屋の「えいようかん」など、防災用に開発された商品もあります。ビスケットやクラッカーも車載向きです。チョコレートは夏場に溶けるため避けましょう。
LEDライト・発炎筒
車に標準装備されている発炎筒には使用期限があります(通常4年)。期限が切れていないか確認し、必要に応じてLED式の非常信号灯に交換しておくとよいでしょう。LED式は電池で繰り返し使え、発炎筒と違って火災のリスクもありません。
ヘッドライト(頭につけるLEDライト)は車載防災の必須アイテムです。車外に出て作業する際に両手が空くため、タイヤ交換やけが人の救護などにも対応できます。車のヘッドライトはエンジンを切ると使えなくなるため、別途ライトを用意しておくことが大切です。
簡易トイレ
渋滞中にトイレに行けない、道路が寸断されて身動きが取れないなど、車内でのトイレ問題は深刻です。携帯トイレ(最低5回分)をダッシュボードやトランクに常備しておきましょう。目隠し用のポンチョやカーテンがあると、路上でも最低限のプライバシーを確保できます。
脱出用ツール
車が水没した場合や事故で閉じ込められた場合に備えて、シートベルトカッター付きの緊急脱出用ハンマーを用意しておきましょう。運転席から手の届く位置(サンバイザーに挟む、ドアポケットに入れるなど)に固定しておくのがポイントです。トランクにしまってしまうと、いざという時に取り出せません。
・長期保存水(車載対応・2L×2~3本)
・高温対応非常食(えいようかん、ビスケットなど)
・LEDヘッドライト+予備電池
・LED式非常信号灯
・携帯トイレ(5~10回分)
・緊急脱出用ハンマー(シートベルトカッター付き)
・軍手
・レインコート
・アルミブランケット(2枚)
・ホイッスル
・救急セット(絆創膏・包帯・消毒液)
・モバイルバッテリー+車載充電器
・タオル(大判2枚)
・ゴミ袋(45L・5枚)
・ガムテープ
車中泊避難に必要な追加グッズ
車中泊を快適にするアイテム
車中泊避難を想定する場合は、基本セットに加えて以下のアイテムを用意しておきましょう。
車用の窓用目隠しシェードは、プライバシー確保と断熱の両方に効果があります。車種に合ったサイズのものを用意しておくと、隙間なくフィットして外からの視線を遮れます。100均の銀マット(アルミシート)をカットして自作することもできます。
寝袋またはブランケットは季節を問わず必要です。車内は意外と冷えるため、夏でも薄手のブランケットは用意しておきましょう。エアーマットがあると、シートのデコボコを解消して寝心地が格段に向上します。
エコノミークラス症候群の予防
車中泊避難で最も注意すべきリスクがエコノミークラス症候群です。長時間同じ姿勢で足を下げたまま寝ると、下肢の静脈に血栓ができ、肺に詰まると命に関わります。熊本地震では車中泊避難者にエコノミークラス症候群による死亡例が報告されています。
予防のポイントは、こまめに体を動かすこと、水分を十分に摂ること、座席を倒してできるだけ平らな姿勢で寝ることです。着圧ソックスを車内に常備しておくと、血行促進に効果的です。
一酸化炭素中毒を防ぐ
寒い時期にエンジンをかけたまま車中泊をする場合、排気管が雪や泥でふさがれると車内に一酸化炭素が逆流する危険があります。総務省消防庁によると、毎年一酸化炭素中毒による死亡事故が発生しています。エンジンをかけたまま寝ることは極力避け、防寒グッズで暖を取るようにしましょう。

季節別の車載防災対策
夏場の対策:熱中症と高温劣化
夏の車内温度は60度以上に達することがあります。この高温環境では、通常の非常食やバッテリーが劣化・故障するリスクがあります。車載用の防災グッズは必ず高温対応の商品を選ぶことが鉄則です。
熱中症対策として、冷却タオルや塩飴、経口補水液パウダーを積んでおきましょう。車が動かせない状況で窓を開けられない場合、車内温度が急上昇するため、日よけシェードは夏の車載防災の必須アイテムです。
冬場の対策:寒さと雪
冬は車中泊の寒さが厳しくなります。ダウンジャケットやフリースブランケット、使い捨てカイロを多めに積んでおきましょう。降雪地域ではスコップ・スノーブラシ・毛布・牽引ロープもトランクに入れておくと安心です。大雪で立ち往生した場合、排気管が雪で埋まると一酸化炭素中毒の危険があるため、スコップでこまめに排気管周りの雪を除去してください。
冬場はガソリンの残量にも注意が必要です。暖房を使うにはエンジンをかける必要がありますから、燃料が半分以下になったら給油する習慣をつけておきましょう。災害時にはガソリンスタンドが営業できない場合もあるため、常にある程度の燃料を維持しておくことが重要です。
車載防災グッズの保管場所と管理方法
トランクに専用ボックスを設置
車載防災グッズはトランクに専用の収納ボックスを置いて管理するのがおすすめです。ホームセンターで売っている蓋付きの樹脂製ボックス(RVボックスなど)が丈夫で積み重ねもでき、使いやすいです。ボックスに入れておけば、トランク内で荷物が散乱することもありません。
半年に1回の定期チェック
車載用の防災グッズは「入れたまま忘れる」パターンが非常に多いです。車検や6か月点検のタイミングで中身をチェックすると決めておけば、忘れにくくなります。チェック項目は以下の通りです。
・保存水と食料の賞味期限
・LEDライトの電池残量
・モバイルバッテリーの充電状態
・発炎筒(LED式含む)の使用期限
・緊急脱出用ハンマーが手の届く位置にあるか
・携帯トイレの数は足りているか
・季節に合わせた入れ替え(冬→防寒具追加、夏→冷却グッズ追加)

運転中に地震が起きた場合の行動手順
まずは安全に停車する
警察庁のガイドラインでは、運転中に大きな地震を感じたら以下の手順で行動することが推奨されています。
1. ハザードランプを点滅させながら徐々に減速する
2. 道路の左側に寄せて停車する
3. エンジンを切り、揺れが収まるまで車内で待機する
4. 車を離れる場合は、キーをつけたまま(プッシュスタートの場合はキーを車内に残して)ドアをロックせずに避難する
キーを残すのは、緊急車両の通行の妨げになった場合に車を移動できるようにするためです。車検証と貴重品は持ち出しましょう。
津波のリスクがある場合
海の近くで地震を感じたら、津波の危険があります。車での避難は渋滞に巻き込まれるリスクがあるため、原則として車を捨てて高台に徒歩で避難してください。東日本大震災では車で避難しようとして渋滞に巻き込まれ、津波に飲まれたケースが多数報告されています。

