避難所で一番つらいのは、実は「床の硬さ」だったという声が被災者から数多く寄せられています。体育館のフローリングや公民館のタイル床で一晩寝ると、翌朝には腰や背中がバキバキになり、まともに動けなくなることも珍しくありません。
防災用のエアーマットがあれば、空気の層が体圧を分散してくれるため、硬い床の上でもある程度の快適さを確保できます。しかも、空気を抜けばコンパクトに収納でき、防災リュックにも入るサイズ感のものが多いのが魅力です。
この記事では、防災用エアーマットの必要性から種類ごとの違い、選び方のポイント、実際に使うときの注意点まで詳しく解説します。

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なぜ避難所にエアーマットが必要なのか
災害発生直後の避難所では、段ボールや薄い毛布を床に敷いて寝るのが一般的です。しかし、段ボール1枚では体圧を分散する効果がほとんどなく、肩・腰・かかとの3点に体重が集中して痛みを感じます。1〜2日なら我慢できても、避難生活が1週間、2週間と長引くと、腰痛や関節の痛みが慢性化してしまいます。
2016年の熊本地震では、避難所や車中泊での生活が長期化する中でエコノミークラス症候群を発症した方が51人にのぼり、うち1名が死亡しています。硬い床での不動に近い状態は血行不良を引き起こし、特に高齢者にとっては命に関わるリスクとなります。エアーマットがあれば体の接触面が均等になり、血流の偏りを防ぐ効果が期待できます。
さらに、床からの冷気も見落としがちなポイントです。冬場の体育館の床温度は外気温に近い5〜10℃程度まで下がることがあり、背中から体温が奪われ続けます。エアーマットは空気の層が断熱材の役割を果たすため、底冷えの防止にも大きな効果があります。寝袋と組み合わせれば、保温効果はさらにアップします。
厚生労働省も避難所における健康管理ガイドラインの中で、床面からの冷気対策と適切な寝具の確保を推奨しています。特に高齢者や持病のある方は、底冷えによる体調悪化が深刻な問題になるため、エアーマットの準備は優先度が高いと言えます。
防災用エアーマットの種類と特徴
手動膨張式(口で膨らませるタイプ)
付属のストローや口で空気を吹き込んで膨らませるタイプです。最も軽量でコンパクトに収納でき、電源不要なのが大きなメリットです。膨らませるのに3〜5分程度かかりますが、構造がシンプルなぶん壊れにくく、防災用品としての信頼性が高い製品です。部品が少ないので故障するポイントがほとんどなく、長期保管にも向いています。
厚さは約5cm程度の製品が多く、体育館の硬い床でも背中への負担をかなり軽減できます。価格も1,000〜2,000円台と手頃なものが多いため、家族分を揃えやすいのも利点です。重量は200〜400g程度と非常に軽く、防災リュックの中で場所を取りません。
足踏み式(ポンプ内蔵タイプ)
足踏み式は本体にエアポンプが内蔵されており、足で踏むだけで30秒〜1分程度で膨らませることができます。口で膨らませる手間が不要で、衛生面でも優れています。特に災害時は感染症リスクが高まるため、口を使わずに膨張できるメリットは見逃せません。
厚さは8〜10cm程度のものが主流で、クッション性は手動式よりもワンランク上です。体の沈み込みが均一になるため、横向きで寝ても肩や腰が痛くなりにくいのが特徴です。重量は700〜900g程度、価格帯は3,000〜5,000円が目安になります。枕が一体型になっている製品もあり、別途枕を持ち出す必要がない点も便利です。
自動膨張式(バルブ開放タイプ)
バルブを開けるとウレタンフォームの復元力で自動的に膨らむタイプで、クッション性は3タイプの中で最も高く、寝心地の良さでは最上位です。内部のスポンジ素材が体圧を吸収するため、まるでベッドのような感覚で眠ることができます。
ただし、内部にウレタン素材が入っているぶん重量があり(1〜2kg程度)、収納サイズも大きくなります。車載用の備蓄としては優秀ですが、徒歩避難で持ち出すにはやや重いかもしれません。バルブを開けてから完全に膨張するまで5〜10分程度かかることもあるため、急いでいる場面では多少の待ち時間が発生します。

防災用エアーマットを選ぶときの5つのポイント
1. 厚さは5cm以上を目安にする
エアーマットの厚さはクッション性と断熱性に直結します。薄すぎると底付き感が出て床の硬さがダイレクトに伝わるため、最低でも5cm以上の厚さがある製品を選びましょう。10cm以上の厚みがあれば、体育館の床でもほぼベッドに近い寝心地を実現できます。特に腰痛持ちの方や高齢者は、厚めのモデルを優先的に選ぶことをおすすめします。
2. 収納サイズと重量のバランスを見る
防災リュックに入れるなら、収納時のサイズが直径10cm×長さ25cm程度、重量500g以下を目安にしましょう。車載用であればサイズの制約は緩くなりますが、持ち出し用としても使えるサイズ感のものを選んでおくと汎用性が高まります。コンパクトに収納できるかどうかは、防災グッズの「持ち出し率」に直結するため非常に重要なポイントです。
3. 耐荷重を確認する
体重80kg以上の方が使う場合は、耐荷重150kg以上の製品を選ぶのが安心です。耐荷重を超えた状態で使い続けると、パンクや空気漏れの原因になります。家族で共有する場合は、一番体重が重い人に合わせて耐荷重を選びましょう。商品ページに耐荷重の記載がない製品は避けたほうが無難です。
4. 補修キットが付属しているか
エアーマットは尖ったものに当たると穴が開くリスクがあります。避難所の床にガラス片や釘が落ちている可能性もゼロではないため、補修パッチが付属している製品を選ぶと安心です。補修キットがあれば現地で穴を塞いで継続使用できます。マットの下に薄いシートやタオルを1枚敷いておくと、パンク防止にもなります。
5. 表面の素材と肌触り
直接肌に触れる場合もあるため、表面素材の肌触りは意外と重要です。ナイロン素材は耐久性に優れますが、肌に張り付く感触が苦手な方もいます。起毛加工が施された製品なら、肌触りが柔らかく夏でもベタつきにくいのでおすすめです。また、滑り止め加工がある製品はマットの上で寝返りを打ってもズレにくいため、安定した睡眠が得られます。
エアーマットと組み合わせると効果的なアイテム
エアーマットの上に寝袋を敷いて使うと、断熱層が二重になり保温効果がさらに高まります。特に冬場の避難では、マット単体よりも寝袋との組み合わせのほうが格段に暖かく過ごせます。マットが体圧分散と断熱を担い、寝袋が保温を担うという役割分担で、最小限の装備で最大限の効果が得られます。
また、マットの下にアルミシート(エマージェンシーシート)を敷くと、床からの冷気をより効果的に遮断できます。アルミの熱反射効果で体温を逃がしにくくなるため、少ない装備で最大限の保温効果を得たい方におすすめの組み合わせです。
枕代わりにタオルを丸めて使うのも有効です。エアーマットの中には枕一体型のモデルもありますが、枕なしのモデルの場合はタオルや衣類を丸めて首の角度を調整すると眠りやすくなります。わざわざ枕を持っていく必要はなく、身近なもので代用するのがポイントです。日本赤十字社の防災啓発でも、身近なものを活用した避難生活の工夫が紹介されています。
保管時と使用時の注意点
エアーマットの天敵は「高温」と「湿気」です。夏場の車内は温度が60℃を超えることがあり、接着部分が剥がれたり素材が変形したりする原因になります。車載保管する場合は、遮光バッグに入れてトランクの下部に置くなどの対策が必要です。JAF(日本自動車連盟)の検証でも、真夏のダッシュボード付近は80℃を超える温度になることが確認されています。
また、使用後は完全に空気を抜いてから保管しますが、長期間空気を入れっぱなしにしておくとバルブ周辺にストレスがかかります。保管前にバルブの動作とシール部分をチェックし、問題がなければ収納袋に入れて直射日光を避けた場所に置きましょう。
年に1回は膨らませて空気漏れがないか確認するのがベストです。10分放置して膨らみが減っていなければ正常と判断できます。空気漏れが見つかった場合は、補修キットで対応するか、新しい製品への買い替えを検討してください。
使用時の注意として、エアーマットの上で靴を履いたまま歩いたり、鋭利なものを置いたりしないようにしましょう。パンクの原因になります。マットを敷く前に、床面にガラスや釘などの危険物がないか確認する習慣をつけてください。
マットの種類別コスト比較
手動膨張式は1,000〜2,000円程度で最も安く、家族4人分でも8,000円以内に収まります。足踏み式は3,000〜5,000円、自動膨張式は5,000〜10,000円が目安です。家族全員分を揃える場合、まずは手動膨張式で統一して、余裕ができたら車載用に自動膨張式を1〜2枚追加するという段階的な備え方が現実的です。
総務省消防庁の調査でも、防災グッズへの投資は「まず最低限を揃えてから徐々に充実させる」アプローチが推奨されています。一度に完璧を目指すよりも、まず行動することが大切です。
まとめ:エアーマットは避難所生活の「睡眠の質」を守る必需品
防災用エアーマットは、避難所の硬い床や車中泊での睡眠を大きく改善してくれるアイテムです。手動式なら軽量・安価で防災リュックにも収まり、足踏み式なら衛生的で膨張も簡単です。厚さ5cm以上を目安に、補修キット付きの製品を選ぶと安心です。
まずは家族の人数分の手動膨張式を揃えて、余裕があれば車載用に自動膨張式を追加するのが現実的な備え方です。寝袋やアルミシートと組み合わせることで、避難生活での睡眠の質を最大限に高められます。避難生活での体力低下を防ぐためにも、エアーマットを防災備蓄リストに加えておきましょう。


