災害時にもっとも被害を受けやすいのが高齢者です。東日本大震災では犠牲者の約6割が65歳以上でした。体力面の問題だけでなく、持病の薬が手に入らない、避難所の環境に適応できないなど、シニア世代ならではのリスクが複数存在します。
しかし、高齢者向けの防災グッズというと「何を揃えればいいのかわからない」という声が多いのも事実です。一般的な防災セットは若い世代を想定して作られていることが多く、高齢者の体力や生活習慣に合っていない場合があります。
この記事では、高齢者ご本人はもちろん、離れて暮らすご家族が代わりに準備する場合にも役立つよう、シニア世代に特化した防災グッズと備え方を詳しく解説します。できることから少しずつ始めていきましょう。
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高齢者の防災で最優先すべきは「薬」の備え
常備薬は最低1週間分をストック
高血圧、糖尿病、心臓疾患など、持病のある高齢者にとって薬の確保は命に直結する問題です。処方薬は最低1週間分を防災バッグに入れておくことが最重要事項です。かかりつけ医に相談すれば、防災用として多めに処方してもらえることがあります。
薬には使用期限がありますから、半年に1回は入れ替えましょう。薬の入れ替えを忘れないように、通院日のたびに防災バッグの薬もチェックする習慣をつけると効率的です。
お薬手帳のコピーが命を守る
災害時にかかりつけの病院が被災して通えない場合、別の医療機関で薬を処方してもらう必要があります。その際にお薬手帳のコピーがあれば、スムーズに同じ薬を出してもらえます。コピーをラミネート加工して防災バッグに入れるか、スマートフォンで撮影してクラウドに保存しておく方法もあります。
お薬手帳だけでなく、健康保険証・介護保険証・後期高齢者医療被保険者証のコピーも一緒に入れておきましょう。かかりつけ医の名前・連絡先・病名・アレルギー情報を記載したカードも作っておくと、意識がない状態でも救急隊員に正確な情報を伝えられます。

体力に合わせた防災リュックの選び方
重さは3kg以内が目安
高齢者が背負える防災リュックの重さは、体力にもよりますが3kg以内を目安にするのがおすすめです。若い世代の半分以下の重さですが、これでも長距離の避難ではかなりの負担になります。中身を厳選し、本当に必要なものだけを入れることが大切です。
リュックの肩ひもは幅広でクッション性のあるものを選びましょう。チェストベルト(胸の前で留めるベルト)がついていると、歩行中にリュックがずれにくく、姿勢も安定します。
キャスター付きバッグという選択肢
膝や腰に不安がある方は、リュックではなくキャスター付きの防災バッグも検討してみてください。平坦な道路であれば引いて移動できるため、体への負担が大幅に軽減されます。ただし、がれきが散乱した道や階段では使えないため、最低限のものを入れた小さなリュックも併用するのが現実的です。
ショッピングカート型の防災バッグは、普段の買い物にも使えるため、押し入れの奥にしまい込んで忘れるということがありません。日常使いと防災用を兼ねられるのは大きなメリットです。
高齢者が見落としやすい防災グッズ
老眼鏡の予備
意外と見落としがちなのが老眼鏡の予備です。避難時に老眼鏡を持ち出せなかった場合、薬の説明書が読めない、配給の案内が見えない、連絡先が確認できないなど、生活全般に支障が出ます。安価なものでもいいので、防災バッグに1つ入れておきましょう。
補聴器の予備電池
補聴器を使っている方は、予備の電池を最低1週間分は備えておいてください。避難所での重要な案内が聞き取れないと、食料配給や避難情報を逃してしまう可能性があります。充電式の補聴器の場合は、モバイルバッテリーとUSB充電ケーブルも一緒に用意しておくと安心です。
入れ歯関連用品
入れ歯を使っている方は、入れ歯洗浄剤、入れ歯安定剤、入れ歯ケースを防災バッグに入れておきましょう。入れ歯がないと食事が十分にとれず、栄養状態が悪化する恐れがあります。避難時に入れ歯を忘れてしまうケースは非常に多いため、予備の入れ歯があれば理想的ですが、なければケースに入れて枕元に置いておく習慣をつけてください。
大人用おむつ・尿漏れパッド
普段は尿漏れがない方でも、避難所のトイレ環境(遠い、行列、和式しかない)によって困る場面があります。念のために尿漏れパッドを数枚入れておくと、精神的な余裕が生まれます。介護が必要な方は大人用おむつを3日分以上備蓄しておきましょう。

避難所での体調管理に必要なもの
エコノミークラス症候群を防ぐ
避難所では狭いスペースで長時間同じ姿勢を続けることが多く、高齢者はエコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)のリスクが高まります。着圧ソックス(弾性ストッキング)を防災バッグに入れておくと、足のむくみや血栓の予防に効果的です。こまめに足を動かすことも重要ですが、着圧ソックスがあれば就寝中も血行促進が期待できます。
低体温症対策
高齢者は体温調節機能が低下しているため、冬場の避難所では低体温症になりやすい状態です。アルミブランケット(エマージェンシーシート)に加えて、使い捨てカイロを10個以上備えておくことをおすすめします。ただし、カイロの低温やけどには注意が必要です。肌に直接貼らず、衣類の上から使うようにしましょう。
口腔ケア用品
日本歯科医師会によると、災害時に口腔ケアが不十分になると、特に高齢者は誤嚥性肺炎のリスクが大幅に上がります。歯ブラシ・歯磨き粉に加えて、水がなくても使える液体歯磨きや口腔ケア用ウェットティッシュを用意しておきましょう。入れ歯の方も歯茎の清掃は欠かさず行うことが大切です。
要介護者のための追加の備え
介護用品の備蓄
要介護の高齢者がいるご家庭では、通常の防災グッズに加えて介護用品の備蓄が必要です。大人用おむつ、清拭剤(せいしきざい)、防水シーツ、とろみ剤など、日常的に使っている介護用品を3~7日分備えておきましょう。
車いすを使用している方は、避難経路にスロープがあるかどうかを事前に確認しておくことが重要です。自治体によっては「福祉避難所」が指定されており、要介護者や障がいのある方が優先的に利用できます。お住まいの地域の福祉避難所がどこにあるか、あらかじめ確認しておきましょう。
医療機器の電源確保
在宅酸素療法や人工呼吸器など、電源が必要な医療機器を使っている方は、予備バッテリーやポータブル電源の確保が命に直結します。医療機器メーカーや主治医に相談し、停電時の対応方法を事前に確認しておいてください。自治体やケアマネジャーに災害時の支援体制を確認しておくことも必要です。

離れて暮らす高齢の家族のために準備すること
代わりに防災バッグを準備してあげる
高齢の親御さんが自分で防災グッズを揃えるのは、体力的にも情報収集力的にも難しい場合があります。帰省のタイミングで防災バッグを一式用意してあげるのが、離れて暮らすご家族にできる最大の防災対策です。中身の説明を丁寧に行い、置き場所は玄関のそばなどすぐに持ち出せる位置にしましょう。
連絡手段を複数確保しておく
スマートフォンが使えない高齢者も多いため、災害用伝言ダイヤル171の使い方を一緒に練習しておくことが大切です。固定電話からでも利用できるため、スマートフォンが苦手な方でも安心です。ご近所や民生委員の連絡先も把握しておくと、安否確認のネットワークが広がります。
高齢者向け防災グッズチェックリスト
【最優先】
・常備薬(1週間分)
・お薬手帳のコピー
・健康保険証・介護保険証のコピー
・かかりつけ医の連絡先メモ
【身体ケア】
・老眼鏡の予備
・補聴器の予備電池
・入れ歯関連用品
・着圧ソックス
・使い捨てカイロ
・尿漏れパッド
【基本】
・水(500mlペットボトル3本程度)
・やわらかい非常食(おかゆ、ゼリー飲料など)
・LEDライト
・ホイッスル
・口腔ケア用品
・大判タオル
・アルミブランケット
・非常食はやわらかいものを中心に選ぶ(おかゆ、ゼリー飲料、やわらかい煮物の缶詰など)
・リュックの重さは3kg以内を目安にする
・避難経路は平坦なルートを選び、事前に歩いて確認しておく
・ご近所や自治会との関係づくりが災害時の助けになる
・要介護の方は自治体の「避難行動要支援者名簿」に登録しておく


