「非常食って、結局何日分用意すればいいの?」防災の備えを始めようとしたとき、多くの方が最初にぶつかる疑問がこれではないでしょうか。3日分という話もあれば、1週間分必要だという意見もあり、正解がわからなくて手が止まってしまうケースが少なくありません。
結論から言うと、国が推奨しているのは「最低3日分、できれば1週間分」の備蓄です。しかし、この数字だけ覚えていても、実際に何をどれだけ買えばよいのかイメージがわかないですよね。家族の人数や年齢構成、住んでいる地域のリスクによっても適切な備蓄量は変わってきます。
この記事では、非常食の必要日数の考え方から、1人あたりの具体的な備蓄量の目安、保管場所の選び方、ローリングストックの実践方法まで、備蓄に関する疑問をすべて解消します。これから備蓄を始める方も、すでに備蓄している方のチェックにも役立つ内容です。
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非常食が必要な理由を改めて確認しよう
そもそもなぜ非常食の備蓄が必要なのか、改めて確認しておきましょう。必要性を理解することが、備蓄を続けるモチベーションにもつながります。
ライフラインの復旧には時間がかかる
大規模な災害が発生すると、電気・ガス・水道などのライフラインが停止します。復旧までの期間は災害の規模や地域によって異なりますが、過去の事例を見ると、電気は数日〜1週間、水道は1週間〜数週間、ガスは数週間〜1か月以上かかることがあります。
東日本大震災では、一部地域で水道の復旧に1か月以上かかりました。ライフラインが止まった状態では、普段の調理はほぼ不可能です。火も水も使わずに食べられる非常食が必要になる理由がここにあります。
物流の回復にも時間がかかる
コンビニやスーパーの商品は、災害発生後あっという間に売り切れます。道路の寸断や物流の混乱により、商品の補充も滞ります。内閣府の想定では、南海トラフ巨大地震の場合、物流が回復するまでに1週間以上かかる地域が広範囲に及ぶとされています。
「近くにコンビニがあるから大丈夫」という考えは危険です。自分で食料を備蓄しておくことが、自分と家族の命を守ることにつながります。
避難所の食事だけでは不十分
避難所に入れたとしても、食事が十分に行き渡るとは限りません。特に発災直後は避難者の数が多く、1人あたりに配分される食事の量は限られます。食物アレルギーや持病のある方への個別対応も難しいのが現状です。

非常食は何日分必要?国の推奨基準
非常食の備蓄日数については、国の機関からいくつかの指針が出ています。それぞれの基準を確認しましょう。
内閣府の推奨:最低3日分、できれば1週間分
内閣府は「最低3日分、できれば1週間分の食料の備蓄」を推奨しています。3日分というのは、救援物資が届くまでの最短の目安です。しかし、大規模災害では救援物資の到着が遅れることが多いため、できれば1週間分の備蓄が望ましいとされています。
内閣府の防災情報ページでは、具体的な備蓄の方法についても解説されています(参考:内閣府 防災情報のページ)。
農林水産省の推奨:1週間分
農林水産省は「家庭備蓄ポータル」で、1週間分の食料備蓄を推奨しています。具体的な品目や数量の目安も示されており、非常に参考になります(参考:農林水産省 家庭備蓄ポータル)。
南海トラフ地震を想定した場合:2週間分
南海トラフ巨大地震が想定される地域では、物流の回復に2週間以上かかる可能性があるため、2週間分の食料備蓄が推奨されています。静岡県や高知県など太平洋側の自治体では、県独自の備蓄ガイドラインとして2週間分の備蓄を呼びかけているところもあります。
最低ライン:3日分(救援物資が届くまでの最短期間)。推奨ライン:7日分(多くの災害で物流が回復する目安)。万全ライン:14日分(南海トラフ巨大地震などの大規模災害を想定)。まずは3日分から始めて、段階的に7日分→14日分と増やしていくのが現実的です。
1人あたりの備蓄量を具体的に計算しよう
「7日分」と言われても、実際にどれくらいの量になるのかイメージしにくいですよね。1人あたりの具体的な必要量を計算してみましょう。
水の備蓄量
飲料水は1人1日3リットルが目安です。これには飲み水だけでなく、調理用の水も含まれます。
3日分:9リットル(2リットルペットボトル約5本)
7日分:21リットル(2リットルペットボトル約11本)
14日分:42リットル(2リットルペットボトル約21本)
4人家族の7日分だと84リットル(2リットルペットボトル42本)になります。かなりの量ですが、分散保管すれば十分に保管可能です。
主食の備蓄量
1日3食として、アルファ米やパンの缶詰を1食1個で計算します。
3日分:主食9食分(アルファ米6袋+パン缶3缶など)
7日分:主食21食分(アルファ米14袋+パン缶7缶など)
全食をアルファ米やパンにする必要はありません。レトルト食品やカップ麺と組み合わせましょう。
おかず・副食の備蓄量
缶詰(ツナ、サバ、コーンビーフなど)、レトルト食品(カレー、シチューなど)、フリーズドライ食品(味噌汁、スープなど)を1日2〜3品程度備蓄しておくと、食事にバリエーションが出ます。
おやつ・嗜好品
ようかん、ビスケット、飴、チョコレートなどを1人1日1〜2個程度。心の栄養として非常に重要な備蓄です。

家族構成別の備蓄プラン
家族の人数や構成によって、必要な備蓄量と内容は変わります。代表的な家族構成別のプランを見てみましょう。
1人暮らしの場合(7日分の例)
水:21リットル(2リットル×11本)。主食:アルファ米10袋+パン缶4缶+カップ麺4個+パックご飯3個。おかず:缶詰7缶+レトルトカレー3袋+フリーズドライスープ7袋。おやつ:ようかん5本+ビスケット缶1缶。
1人暮らしの場合は量が少ないため、クローゼットの一角や収納ケースひとつで十分に保管できます。
夫婦2人の場合(7日分の例)
上記の1人分の2倍が基本ですが、食事の好みが異なる場合は味のバリエーションを増やしておくと良いでしょう。共働きの場合は、自宅用と職場用の2セットを準備することも検討してください。
子供のいる4人家族の場合(7日分の例)
大人2人+子供2人の場合、子供の食事量は大人の5〜8割程度と考えます。水は大人1人3リットル×2+子供1人2リットル×2で1日10リットル、7日分で70リットルです。
子供向けの非常食(味付きアルファ米、ゼリー飲料、ビスケットなど)を多めに入れておくのがポイントです。離乳食期のお子さんがいる場合は、ベビーフードや液体ミルクも忘れずに。
高齢者がいる場合
高齢者は硬いものが食べにくかったり、持病の薬が必要だったりする場合があります。おかゆタイプのアルファ米やフリーズドライのおかゆ、やわらかい缶詰パンなど、食べやすい形態の非常食を中心に備蓄しましょう。常用薬の予備も忘れずに。
非常食の保管場所と保管方法
備蓄量が決まったら、次は保管場所の確保です。限られたスペースを有効活用するコツを紹介します。
保管場所の基本条件
非常食の保管に適した環境は、直射日光が当たらず、高温多湿にならない場所です。具体的には以下のような場所が適しています。
押入れやクローゼットの中段、リビングの収納棚、キッチンのパントリー、廊下の収納スペースなどが一般的です。室温が15〜25度程度に保たれる場所が理想的です。
分散保管のすすめ
非常食を1か所にまとめて保管するのではなく、複数の場所に分散して保管することをおすすめします。これは、災害で一部の保管場所が被害を受けても、他の場所の備蓄が無事であれば使えるという考え方です。
たとえば、キッチン(普段使い用)、寝室の押入れ(家用)、玄関近くの収納(持ち出し用)、車のトランク(移動用・冬季のみ)というように分散させると安心です。
保管に適さない場所
夏場の車内(50度以上になることがある)、屋根裏(高温になりやすい)、ベランダ(直射日光と温度変化が大きい)、浴室の近く(湿度が高い)は避けてください。
非常食を床に直置きすると、湿気や害虫の影響を受けやすくなります。すのこや棚の上に置く、収納ケースに入れるなどの対策をしましょう。また、ネズミや虫の被害を防ぐため、食品はしっかり密閉した状態で保管してください。段ボール箱のまま放置すると虫が発生しやすいので、プラスチック製の収納ケースへの移し替えがおすすめです。

ローリングストックで備蓄を無駄なく維持する方法
備蓄した非常食を賞味期限切れで無駄にしないために、ローリングストックの実践方法を紹介します。
ローリングストックとは
ローリングストックとは、備蓄食品を日常的に消費しながら、食べた分だけ新しいものを買い足す備蓄方法です。「食べる→買い足す→食べる→買い足す」を繰り返すことで、常に新鮮な備蓄を維持できます。
従来の「買って置いておく」方式だと、気づいたら賞味期限が切れていた、という事態になりがちです。ローリングストックなら食品ロスを防ぎつつ、非常食の味にも慣れておけるという一石二鳥の方法です。
月に1回の「備蓄デー」を設定する
毎月1日や防災の日(9月1日にちなんで毎月1日)を「備蓄デー」と決めて、備蓄食品の中から賞味期限が近いものを食べ、その分を買い足す日にしましょう。家族のイベントとして楽しむと、習慣化しやすくなります。
管理表で賞味期限を見える化する
備蓄している非常食の名前、個数、賞味期限を一覧表にまとめましょう。冷蔵庫の横やクローゼットの扉の裏など、目につきやすい場所に管理表を貼っておくと、賞味期限のチェックを忘れにくくなります。スマートフォンのリマインダーアプリを活用するのも効果的です。
ローリングストック向きの食品と長期保存向きの食品
保存期間が1〜2年程度の食品(レトルト食品、パックご飯、カップ麺など)はローリングストック向き、保存期間が5年以上の食品(アルファ米、缶詰パン、ようかんなど)はしまい込み備蓄向きです。両方を組み合わせて備蓄すると、管理の手間と保存性のバランスが取れます。
東京都の防災ブック「東京くらし防災」でも、ローリングストックの具体的な実践法が紹介されています(参考:東京都防災ホームページ(www.bousai.metro.tokyo.lg.jp・サイト終了))。
備蓄を始めるための3ステップ
「何から始めればいいかわからない」という方のために、備蓄を始めるための具体的なステップを紹介します。
ステップ1:まず3日分を購入する
いきなり7日分をそろえようとすると、費用も保管場所も大変です。まずは3日分の備蓄から始めましょう。水6リットル(1人分)、アルファ米3袋、パン缶2缶、缶詰3個、お菓子3個程度で十分です。費用は1人あたり3,000〜5,000円程度です。
ステップ2:1〜2か月で7日分に増やす
3日分の備蓄ができたら、少しずつ買い足して7日分を目指しましょう。毎月の買い物のついでに非常食を2〜3個ずつ追加していけば、1〜2か月で7日分に達します。無理のない範囲で進めることが長続きのコツです。
ステップ3:ローリングストックを習慣化する
7日分の備蓄ができたら、あとはローリングストックで維持するだけです。月に1回の備蓄チェックを習慣にして、賞味期限が近いものから消費→買い足しを繰り返しましょう。

よくある備蓄の失敗と対策
非常食の備蓄でよくある失敗パターンと、その対策を紹介します。先人の失敗から学んで、効率的な備蓄を目指しましょう。
失敗1:買ったまま放置して賞味期限切れ
最も多い失敗パターンです。対策としては、前述のローリングストックと管理表の活用が有効です。スマートフォンのカレンダーに「備蓄チェック日」を登録しておくのも効果的です。
失敗2:同じものばかり備蓄してしまう
アルファ米の白飯だけ大量に買ったり、パン缶だけ箱買いしたりするのはNGです。主食・おかず・汁物・おやつのバランスを意識して、味のバリエーションも持たせましょう。
失敗3:水の備蓄を忘れる
食料は備蓄したのに水を忘れてしまうケースが意外と多いです。水は食料以上に重要な備蓄品です。1人1日3リットルを基本に、必ず食料と同時に備蓄しましょう。
失敗4:家族の好みやアレルギーを考慮しない
自分だけの判断で備蓄すると、家族が食べられない・食べたくないものばかりになることがあります。備蓄品の選定は家族全員で行い、試食してから購入することが大切です。

